884.逆算はダメよ(2018.9.3掲載)
5年前の夏、従兄弟の長男(小4)に頼まれて夏休みの理科研究を下請けしたことがあった。 理系人間の矜持とプライドで納品した作品名は、「pH指示薬を作ろう!」。ブドウ、オレンジ、トマトの皮を搾って得た色水がpHで変化するかどうか調べ、pH指示薬を自作する実験である。 酸性で赤、アルカリ性で青に変化するアントシアニン色素を含むブドウが最適ということが分かり、pH2のレモンが酸性でpH12のこんにゃくがアルカリ性であることを色で示して大成功、という結末だった。 優秀作品賞の自信はあったが、佳作にも選ばれなかった。 低評価の理由がわからず5年間くすぶっていたのだが、先日、理科研究を審査する立場を経験して明確にその理由がわかった。 審査したのは「マリンチャレンジプログラム」という海をテーマとした中高生の理科研究で、主催は日本財団。中四国予選のエントリーから全国大会出場作品を3本選ぶ審査だった。 審査員全員一致で選ばれたのは、「モクズガニが河口から源流に遡上する条件を調べる」「貝やヤドカリの寄生虫を調べ食用魚類の寄生虫防除につなげる」「アユが遡上する魚道に白黒縞模様の回転ドラムを設置して遡上を促進する」の3作品。 どれも気の遠くなるフィールドワークをコツコツ重ね、すぐに実用化できるかどうか分からない大きなテーマにぶつかったものだった。実験途中で終わっても、次の実験や成功した時の映像が楽しくイメージできるワクワク系。 逆に、落選したのはうまくまとめた研究。もしかしたら結論を知っている指導者が逆算し、収まりのいい実験を指導したような気配があるストーリー。 やっぱり逆算はダメなんだ。 常に結果を求められるサラリーマンが陥りがちな結論からの逆算手法。垢にまみれた老かいな政治家じゃないんだから、イノベーションにつながる無鉄砲企画でぶつかっていこう。 過去の逆算芸を恥じた、ひと夏の審査員経験であった。
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