888.患者の嘘(2018.10.01掲載)
2年前、花嫁の父を経験した。 ダスティンホフマンにはなれなかったが、バージンロードの哀しみをたっぷり体感させてもらった。 結婚を許す時のハードルを不本意ながら下げてしまい、ドラマでよく見る頑固おやじにもなれなかった。 その分、その後の定期的な酒席で婿殿の誠実さを観察している。日大芸術学部の心理学者、佐藤綾子博士が医学系雑誌で解説していた「患者の『嘘』をどこで見抜くか」という記事を参考にして…。 嘘は、言葉と体と顔に出るらしい。 言葉の嘘。患者が嘘をつく時、言葉が出るまでの間が長くなる。 「タバコはやめてください」「…はい、頑張ります」 この患者は頑張らない。もちろん、声が上ずったり、小さくなったり、話のスピードが早くなるのも嘘のサイン。 体の嘘。患者が膝の上に置いた手の指先を頻繁に組み替える。足先をバタバタと小さく揺する。自分の髪や鼻、あごの先を何度も触る。「適応動作(アダプターズ)」と呼ばれるこれらの行動を伴う発言には、嘘が混じっている。 顔の嘘。顔の上半分が無表情で、下半分のみ笑っている。まばたきの回数が多い(通常は1分間に38回前後)。舌で上唇をなめたり、上下の唇をかみ締めたりする。これらのサインも要注意。「目も口元も物を言う」のだ。 医療において患者は素人で医師はプロ、いろいろ思うところあっても診察室では多くの場合、医師に対して「はい」と言ってしまう。 これって、婿殿と花嫁の父の関係に似てるな。「幸せにします」としか言いようがないもんな。 まぁ、娘も婿殿も患者の嘘を見抜く立場の職業だから、父親のたくらみなどとっくにお見通しかもしれない。 とはいえ、しばらくは悪あがきの観察を続ける所存である。
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