890.2:8(2018.10.15掲載)
2:8。これは、現在の日本における戦前生まれと戦後生まれの比率である。 1975年には1:1。つまり、世の中の半数が戦争を知る世代だったのに今は2割。そして近い将来ゼロとなる。 私を含めた戦争を知らない世代が戦争を知るには、戦争体験者へのインタビューを中心としたNHKの検証番組に頼るしかない。 「わたし、人を殺しました。上官の命令は絶対でした」 「背負った荷の重さで肩ひもが擦れ、皮がめくれ、ウジがわきました。今の若い方は、他に方法があったのではと思うかもしれませんが、どうしようもないのが戦場なんです」 「部下に死ねと命じた私が生き残ってしまいました。申し訳なく外出は未だに控えています」 余命を悟った先達が後世を憂い、平和を念じて絞り出した魂の声に心打たれ、その日の就寝前のコップ1杯の水がとてつもなく重たかった。 戦場では水の奪い合いで命を落とすこともあるというのに、平和ボケの今日、飽食と痛飲でドロドロになった血を薄めるように水をあおる。 日本医科大腎臓内科教授の飯野靖彦氏によると、成人が通常の生活の中で汗や尿として失う水分量は、1日約2.5リットル。対して食事で摂る水分は約1リットル。つまり、毎日1〜2リットル程度は水を飲まなければならないというのだ。 2リットルの水って、戦場では何人分なんだろう。炎天下の行軍で脱水症状になった場合、どうやって回復させたのだろう。 ちなみに脱水時の経口補水液を手作りする場合は、水1リットルに砂糖40グラムと塩3グラム。スポーツドリンクより効果があるらしい。もちろん、戦場では詮無い配合であるが。 今夏もコップ一杯の水を英霊に捧げつつ、戦争体験者のこんなコメントに思いを馳せた。 「途中から戦友の死を悲しまなくなりました。ただ祈るだけでした」 世の中から戦争体験者がいなくなるとまた戦争が始まるという。0:10になっても平和な日々が続くよう、祈りをささげる九段坂なのである。
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