894.ヘディング(2018.11.12掲載)
サッカー元日本代表GKの川口能活選手が今季限りで引退するという。 高校時代、へなちょこキーパーとして青春の汗を流した私としては、キーパーの地位を上げてくれた「男前能活」の花道を見届けたいと心から願っている。 キーパーはストイックなポジションである。 フォワードはシュートを100回外しても、1回の決勝点でヒーローになれるが、キーパーは好セーブを100回続けても1回のミスで一生叩かれる。 もちろん、蹴られまくるから痛いし生傷が絶えない。 だから、キーパーにとって怖い選手は、メッシのようなドリブラ―でもロナウドのようなテクニシャンでもなく、ルーニーのように突進してくるちょっと「いっちゃった」感じのやんちゃ小僧なんだ。 浅田次郎先生の金言をお借りする。 「苦労は人に語るものではない。記憶にとどめるべきでもない。神の給うた本物の価値ある苦労であれば、頭が忘れても体は必ず覚えている」 体が覚えているから、サッカー中継で怖いフォワードに反応してしまうし、キーパーのミスで負けた試合を見ると寝られなくなる。たかが部活だから苦労というほどではないが、体は覚えているんだな。 キーパーをやっていて一ついいことがあった。それはヘディングをしなくていいこと。頭がくらくらするヘディングは大嫌いだ。 日経サイエンス誌に「アルベルト・アインシュタイン医学校の神経科学者リプトンが、ヘディングを繰り返すことで選手の脳に生じる損傷を研究している」と書かれていた。えっ、ヘディングで損傷が生じることが前提となっているぞ。大丈夫なのか。 さらに、この損傷(ダメージを受けた脳細胞の体積)は男性より女性選手の方が5倍大きい。男女差が生じる原因は不明だが、首と頭を安定に保つ筋肉の量が男性より少ないから衝撃に弱いという説が有力である。 とにかく、ヘディングで脳がやられるのはまずい。 サッカー少年とその指導者たちは知っているのか。 この論文のせいで、キーパー志望者が増えるんじゃないかと期待する晩秋なのである。
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