896.エイジング(2018.11.26掲載)
むかし、テレビのクイズ番組の予選を受けまくっていた時期があった。 パネルクイズアタック25、アメリカ横断ウルトラクイズ、クイズタイムショック等々。結論から言うと7戦7敗。2次予選くらいまではなんとかパスするのだが、これを通過すれば東京のスタジオ行き、という直前の面接試験で落ちることが多かった。 テレビ映りに問題があったのかな。 そんな予選問題の中に、おかしなのがあった。 「かつお節は、カツオにカビが生えたものである。○か×か」 私は×と答えたが、正解は○だった。クレームをつけた。 「正確に言うと『かつお枯節は、かつお荒節にカビを繁殖させたものである』じゃないですか。カツオにカビが生えたら、ただの腐敗ですよ」 「正確にはそうかもしれませんが、私の方ではなんとも…」 あきらめた。 けど、これが○なら「日本酒は米に酵母が生えたものである」という問題まで○になってしまう。 日本人ならもっと発酵食品を勉強してほしい。日本は伝統的に発酵食品が多い国だし、市場規模も数兆円と大きい。 特にかつお枯節は、日本の高齢化社会の行く末を暗示するような食品である。 煮たカツオを煙でいぶしてできたかつお荒節には、旨味以外に渋味、苦味、えぐ味、酸味など、余分な味(雑味)がかなり含まれている。これはこれで荒節の特徴として悪くはないのだが、カビを繁殖させると半年間かけてこれらの雑味が削ぎ落とされ、純粋なかつお節の旨味だけになる。これが枯節。まさに枯れつつ熟成する工程、エイジングである。 65歳以上の高齢者人口が3514万人で、全人口の27.7%を占める敬老日本。いよいよエイジング時代突入である。拡大と成長の幻影を捨て、ウミやムダを削ぎ落とせば、高齢化社会に十分対応できる日本本来のあるべき姿が現れてくるはず。 半年間かけてエイジングしたかつお枯節は、純粋な旨味とともに常温でも腐敗しない保存性を獲得する。日本国もまた然り。 かつお枯節をお手本に、高齢者30%時代に対応できるエイジング社会を構築しなければならないのである。
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