901.かわきものエレジー(2019.1.7掲載)
お酒が飲めるようになってからの35年間、大晦日の夜の過ごし方は変わっていない。それは、幼なじみ8名で地元の温泉旅館に宿泊する「大人の修学旅行」。 さすがに35年続けると、我が家に紅白を楽しむ場所などない。家人を気にして「12月30日開催にしてほしい」などとわけのわからないことを言っていたメンバーも、ここにきて「大晦日イベントやめないで」と涙目。 時系列でレポートすると… 17時、コンビニでジャンクフードやかわきもの、濡れ珍味などの部屋呑みグッズをしこたま買い込む。この大人買い、まあまあ楽しい。 18時、温泉旅館着。常連VIP扱いかと思いきや、「部屋を散らかす悪党」とのレッテルでも貼られているのか視線は冷たい。 19時、入浴後、座敷で宴会。ゼネコン勤務のメンバーが、優越的地位で圧力をかけて入手したプレミアム銘酒を持ち込み堪能。 21時、紅白を見ながら部屋で2次会。1次会爆食後のおつまみは、漬物、チーズ鱈、ビッグかっちゃん、麦チョコ等。毎年のことながら、かっぱえびせん、ポテチなどのかわきものには誰も手をつけない。 0時、年越し蕎麦は「カップそばどん兵衛」。化学調味料たっぷりのジャンクな味が、泥酔の体に沁みる。 1時、トランプで大富豪大会開始。ローカルルールで大富豪様からカードを置く。よって、強い者がより強くなり、約1時間はポジションチェンジなし。大富豪様はふかふか二重布団、ド貧民は板の間正座。大富豪様は食べ飲み放題、ド貧民は禁酒禁煙。大富豪様のカードはド貧民が運ぶ。ド貧民のカードもド貧民が運ぶ。 しかし、不思議なもので朝の6時までやると全員が全ポジションを経験する。だから栄枯盛衰の定めを知る賢者は、上り詰めても弱者を足蹴にしない。この5時間に人生の縮図が込められ、新年を占うバイオリズムの波動が潜んでいるのだ。 7時、意識朦朧で無言の朝食を終え帰り支度。交わす言葉は「また年末」。1年ぶりでも全然懐かしくない幼なじみの不思議。 やっぱり残ってしまったかわきものを手に帰宅。ちょっとしょっぱい昭和の味、かわきものの味。今年もよろしくの味なのです。
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