912.グルソー(2019.3.25掲載)
天然だしの風味は素材の良さを邪魔することなく、至福のだし感として五感を刺激する。 飽きのこない味、日本の味。 けど、天然だしと対極をなすグルソー(グルタミン酸ナトリウム)の味も捨てがたい。 安っぽいけどクセになる。エグイけどやめられない。偽物だけど濃厚感。毎日はいやだけど無いとさみしい。こんな麻薬的な修飾句で食べたくなるあのグルソーの味。不思議な味。 こだわりの本格ラーメンを食べなれたグルメにもカップラーメンの誘惑に勝てない夜があり、三つ星イタ飯店のパスタを堪能した次の日は、なぜかデュエット(松山市駅前の繁盛店)のグルソーたっぷり庶民のミートスパゲティーに吸い寄せられる。 いやいや庶民の味だけじゃないぞ。伝統的な日本茶の場合、高級になればなるほどグルソー含量が高くなる。拝みたくなるような最高級壷入り知覧一番茶なんかだと、グルソーが多すぎて昆布の味に近くなったりもする。 はたまた政治に利用されたことだってある。日本よりもっとグルソー好きの多いタイでは、グルソーの袋を配って票集めをした政治家もいるらしい。食卓のお供がブラックマネーになったのだ。 そのチープなイメージが災いして、名前も省略されてしまうグルソーだが、脳内の神経伝達物質として活躍する脳科学の分野では、ちゃんとグルタミン酸ナトリウムとフルネームで呼ばれている。 神経伝達物質といえば、最先端の研究分野。そんなところにまで顔を出すなんて、グルソーって結構すごいんだな。 「デュエットのミートスパ」「最高級緑茶」「脳科学」。かつての名番組、NHKの「連想ゲーム」に「スリーヒントゲーム」というコーナーがあった。 この3つのワードで「グルソー」を導くのは、いかな大和田獏でも無理だろうなと思った。
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