928.平六渇水(2019.7.15掲載)
今年の四国地方の梅雨入りは観測史上最も遅い6月26日で、平年より21日も遅かった。 今年の夏は水不足になるのか…「平六渇水」の時みたいに。 平六渇水(へいろくかっすい)と呼ばれる平成6年夏の水不足は、水道水の出る時間帯が1日4時間前後しかなかった。ペットボトルのミネラルウォーターで歯を磨き、風呂の残り湯をトイレに流した。 職場には全国からお見舞いのミネラルウォーターが届いた。ありがたかった。もらっておいて文句を言うのは恐縮だが、だし取りの水として全く使えないものが2種類あった。 それは、硬度1000以上の欧州系の硬水と、炭酸水。前者は全くだしが取れず、後者はだしが濁った。 フォンドボーやブイヨンなどの畜肉だしなら問題ないが、和食のだしには硬度120以下の軟水が適しており、炭酸も少ない方がいい。かつお節も昆布も繊細な水を好むのだ。 ところが東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生によると、悪者にされた硬水と炭酸水、実は、健康的な効能が科学的に証明されている数少ない水だという。 まず、硬水はカルシウム不足を解消してくれる。軟水で暮らす日本人は慢性的なカルシウム欠乏状態であるが、不足が長期にわたると骨から過剰にカルシウムが溶け出し、血管を硬くして心筋梗塞を誘発することがある。 食卓の洋風化で食事由来のカルシウムが減少してしまった今日、硬水摂取は有効な健康法なのだ。 また、炭酸水はスポーツの後の疲労回復に効果的。炭酸水の摂取で体内の酸素濃度が減り、血管が広がることで新陳代謝が促進され、疲労が軽減される。 パイウォーター、クラスター水、マイナスイオン水等のあやしい水が跋扈する昨今、国が効能を認めているアルカリイオン水と共に、硬水と炭酸水はもらってうれしい健康水。 そこまで考えてお見舞いの水を送ってくれたのかな。 だしは取れなかったが、四半世紀前の心遣いに遅ればせながら感謝した次第である。
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