929.希望の白い粉(2019.7.22掲載)
台所に砂糖がないという家庭が最近増えているらしい。 料理の甘味はみりんで整え、コーヒーは無糖。砂糖をまぶしたきな粉を餅につけて食べることもなくなった今日では、たしかに砂糖の存在は危うい。 このことを裏付けるように、1970年に1日約75gだった国民1人あたりの砂糖摂取量は、現在約54g。先進国では最下位の数値らしい。 パン屋でもらってきた食パンの耳を油で揚げ、砂糖をふって食べた小学校時代。白くて甘い結晶はキラキラ輝いていた。ひもじさから一気に解放される希望の白い粉だった。 こんな貧乏時代の救世主も、飽食ニッポンでは悪者扱い。「太る」「糖尿病になる」「骨が溶ける」などの根拠のない噂に翻弄され、辛酸を舐めているのだ。 だから弁護することにした。 まず、砂糖のカロリーはタンパク質と同じで、1gあたり4キロカロリー。脂質は9キロカロリーだから半分以下。甘いものより脂っこいものの方が、はるかに肥満のリスクは高い。 また、砂糖の摂取と糖尿病の間に因果関係がないことは科学的に証明されており、FAOとWHOも1997年に「砂糖の安全宣言」を発表している。もちろん骨も溶けない。 いいことだってあるぞ。 記憶力テストの前に砂糖を摂ると、摂らない場合に比べて成績が上がるという報告がある。また、癒し系の神経伝達物質セロトニンは、砂糖を摂取すると脳内に入りやすくなる。もちろん砂糖は疲れも癒す。 思うに、砂糖が元気だった時代はニッポンも元気だった。「砂糖控えめ」「甘さ控えめ」もいいけど、人間の勢いまで控えてしまったのでは、この国に未来はない。 そんなことを考えながら、上白糖をそっと舐めてみた。 砂糖に転化糖を1%ほど付加した日本特有の上白糖。 そこには、経済成長の勢いを感じさせるあの頃の甘味があった。
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