939.受難のグレープフルーツ(2019.10.7掲載)
今から25年くらい前に、「国立大学病院の痩せる方法」なるダイエットメニューが出回ったことがあった。 グレープフルーツとゆで卵を中心とした1週間分の食事メニューが決められていて、これを2回繰り返すと2週間で10kgの減量が可能。しかも、リバウンドがないという触れ込みだった(例えば1日目の朝食は、グレープフルーツ、ゆで卵1個、トースト1枚、コーヒー)。 出自は全く不明だが私の手元にもメニュー表が届き、ダイエットに悩む親類縁者友人知人に紹介しまくった。結果、10人のうち8人が最高8kgの減量に成功。当時はけっこう感謝されたものだ。 ところが、挑戦中の1人がたまたま国立大学病院で診察を受けたことがきっかけで、全くのでたらめメニューであることが発覚する。 「即刻中止してください。このメニューでは、炭水化物とビタミンが必要量の4分の1しか摂れず危険です」 ドクターは激怒したらしい。痩せるんだけどなぁ。 そんな怪しいグレープフルーツであるが、最近、その匂いを嗅ぐだけで痩せるという情報が拡散している。 グレープフルーツの香り成分「ヌートカトン」には交感神経を強く働かせる作用があり、ノルアドレナリンの分泌が促される。すると、ノルアドレナリンの働きでUCPという脂肪を燃やすタンパク質が作られ、体重が減るというのだ。 そんなに都合よく痩せるのかな。 ところで、グレープフルーツには、高血圧治療薬と一緒に摂ると血圧が下がりすぎてショック症状を起こすという危険な側面が知られている。グレープフルーツに含まれる「フラノクマリン」が肝臓の酵素の働きを抑え、 血液中の薬の濃度が上がって効き過ぎるのだとか。 「国立大学病院の痩せる方法」「ヌートカトン」「フラノクマリン」…。 怪しいキーワード満載の禁断の果実って感じだが、ネット時代の昨今は尖った情報があるとすぐ叩かれてしまう。 グレープフルーツ受難の時代なのである。
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