952.ミニサイクル(2020.1.13掲載)
すっかり見かけなくなってしまった「ミニサイクル」。20型とかいう小さなタイヤのご婦人向け自転車は、ものすごく乗りやすかった。 高校時代の部活帰りは、決まってコーラバー片手のミニサイクルだった。 1本30円のコーラバーでクールダウンしながら風を感じ、高田渡の「自転車に乗って」を口ずさんでペダルを蹴った。甘苦いコーラバーは、青春の蹉跌にぴったりの挫折感を孕んだアイスだった。 17の夜に風を感じるならバイクだろうと言われそうだが、何を隠そう我が愛媛県は傍若無人の自転車天国で、商店街にあふれる自転車に邪魔され買い物もままならない時代があった。 社団法人自転車協会の調べによると、愛媛県は人口100人当たりの自転車保有台数59.3台で全国第6位。1位大阪76.1台、2位埼玉71.0台、3位東京66.5台と大都市が上位を占めるのはわかるが、田舎の愛媛が6位というのはどういうわけか。 実際、当時6人家族の実家でも7台の自転車が車庫を埋め尽くしていた。だから「欲しくてもクルマが買えない」と免許を持っていない父が言い訳のタネにしていた。 一方、坂道とレンガ道の連続で自転車にとって最悪な環境なのが長崎県で、保有台数も100人当たり24.3台と46位。「練習したくても乗る場所がなかった」と自転車に乗れない長崎出身の知人が言い訳のタネにしていた。 愛媛県の自転車保有台数の多さは問題ないとしても、内閣府の「放置自転車・放置原付自転車の多い駅」調査でのランクインはちょっと恥ずかしい。 2005年の調査によると、松山市駅の放置台数は1974台で、全国ワースト11位(1位大阪、2位名古屋、3位新大阪、4位溝の口、5位千葉)。 対策は問答無用の強制撤去。今から35年前、上京後の初出勤で新品の自転車を市役所に持って行かれ、夕暮れの蕨駅前に立ちつくした。許可書の貼付が必要なことなど知らなかった。 仕方なく歩いて駅前のコンビニでコーラバーを探したが、見つからなかった。 放置自転車から景観と歩行者を守るには、半日の猶予すら与えてくれない強制撤去が必須なのである。
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