954.メリケン粉(2020.1.27掲載)
先日、平成生まれの関西人と、昭和の慣用句が通じるかどうかで盛り上がった。 「メートルが上がる」「メリケン粉」「インド人もびっくり」「アッシー君」「当たり前田のクラッカー」等々…。 その中で、「メリケン粉は実家でよく登場するから知っている。小麦粉のことでしょ」と平成生まれ。 確かに、メリケン粉は戦後の貧しい時代にアメリカ産の上質な小麦粉を指していた単語で、国産小麦粉を表すうどん粉と対極をなす単語だった。「アメリカン」を「メリケン」とヒアリングしたことに由来するから、メリケン波止場もメリケンサックも由来は同じだ。 けど、捻挫の治療にメリケン粉が使われていたことは知らないだろう。 幼時、捻挫といえばメリケン粉湿布だった。メリケン粉をお酢で溶いてベトベトにし、患部に塗りつけガーゼと包帯で固定。匂いがきつい上にネチョネチョして気持ち悪かった。工作の授業の石膏人形になった気分だった。 おしゃれな湿布薬もドラッグストアもなかった時代、母親の愛情を感じる家庭の医学だったんだ。 ところで、1日に2万件の捻挫が発生する米国でも推奨されている応急処置法に、小麦粉ならぬ米(RICE)という療法名が付けられていることをご存知だろうか。 Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字でRICE。この処置を受傷直後から24〜72時間行うと、炎症や腫れを最小限に抑え、痛みが和らぐとされている。 まず「安静」。同時に氷や氷水で皮膚の温度が14〜20℃になるまで「冷却」する。20分程冷やし続けると関節内が4℃下がるとされており、代謝が低下し、炎症が鎮静化して痛みが軽減する。そして、うっ血しない程度に患部を末梢から中枢に向かって包帯などで「圧迫」。最後の「挙上」は、帰宅後横になり座布団などを敷いて足を心臓より高い位置に上げることである。 3日間のRICE療法で患部の痛みや腫れは治まることが多い。 戦後、国策として大量のメリケン粉を日本に送り込んだ米国。日本も米を基軸にした農政で農業の復活を図らなければならない。 まさに「RICE療法」なのである。
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