958.ツクシとコゴミ(2020.3.9掲載)
ツクシの季節がやってきた。 大好物の卵とじ、何も言わなくても行きつけのお店で出してくれるからありがたい。 けど、東京在住時、ツクシのおいしさをだれも理解してくれなかった。ツクシなんて、その辺に生えている雑草でしょと。 調べると「東のコゴミ、西のツクシ」という言葉があった。コゴミはクサソテツという山菜の若葉で、この時期東日本でのみ食べられる野草らしい。 今さらながら、東西の文化の違い。 新潟女子短大名誉教授の本間先生は、「東西の文化は縄文人と弥生人がせめぎ合った結果、フォッサマグナで分かれた」と語っていた。フォッサマグナは中部地方で本州を横断する大地溝帯で、地質学の世界では東北日本と西南日本の境目とされている。 なぜフォッサマグマなのかは不明だが、土着の縄文人が九州に上陸した渡来の弥生人に押されつつも、フォッサマグナあたりで踏ん張ったという感じである。 本間先生が挙げた他の東西事例を紹介する。 東の豚肉、西の牛肉…これはよく知られる地域性。武士が多い東日本には馬も多く、牛に慣れた農民が多い西日本と違って牛を飼う余裕がなかった。よって、飼いやすい豚が増え、豚肉嗜好になった。 東の鮭、西の鰤…正月のご馳走として食べる魚の違い。鰤文化圏で育った私は、上野アメ横の新巻鮭が師走の風物詩であることに違和感があった。 東のなす、西のなすび…ついでに東のかぶ、西のかぶら。なすびって標準語じゃなかったの? 東のいます、西のおります…「私はここにいます」という言い方も東西で異なる。私はおります派です。 東の4秒、西の2秒…これは、ゲンジボタルの点滅間隔の違い。つまり、西のホタルの方がせっかち。ヒトもそんな感じだが、弥生人の影響かフォッサマグナの影響か。 さまざまな東西文化がフォッサマグナで線引きされるのは実に不思議。ホタルの瞬きにまで影響を及ぼすのだから、地磁気やマグマのフォースが何かしら関与しているのではないかと思う。 ツクシの卵とじを頬張りながら、数千万年前の地質変動に思いを馳せるのである。
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