963.しゃっくり(2020.3.30掲載)
年度替わりのこの時期、なぜか毎年しゃっくりが止まらなくなるという奇病に襲われる。 季節の変わり目で体調がおかしくなるのか、はたまた年度末総決算のストレスか。 幼時、しゃっくりが止まらず困った時は、冷水を一気飲みしたり、息を止めたり、ごはんを飲み込んだりしていた。それでも止まらない場合は、母が背後から不意に「うわっ」と肩をつかみ、驚かせて止めてくれたりもした。 意外なしゃっくりの止め方もある。土浦協同病院近藤先生のおすすめは、乾いたガーゼのようなもので舌をつかみ、30秒ほど強く引っ張るという方法。のどの奥への刺激により、成功率75%でしゃっくりが止まるらしい。 個人的おすすめは、病院で処方してもらう「プリンペラン」という本来は吐き気止めの薬。同薬の注射も併用すれば、半日で止まる。 ところで、しゃっくりがなぜ起こるのかは完全に解明されていないが、進化の名残説がおもしろい。しゃっくりは、人類が両生類と共有した進化の歴史のお下がりだというのだ。 お下がりの主はオタマジャクシ。 肺とエラの両方を使って呼吸を行うオタマジャクシは、常にしゃっくりを起こしている。 エラ呼吸の際、水をのどに吸い入れてからエラ全体に送り出す必要があるのだが、同時に、水が肺に入らないようにしなければならない。この時、声門を閉じて呼吸管をふさぎ、鋭く水を吸い入れる。これがしゃっくり状態。人間の場合だと、鋭い吸気と声門の閉鎖が「ヒック」という音を生む。 このように、人体には進化の遺産が数多く残されており、シカゴ大学のシュービン博士は、これを利用した解剖学を通して進化生物学を講じている。 人体を解剖すると、その内部は意外と乱雑でごちゃごちゃ。血管や神経が結構非効率的に配されているらしく、そこに魚類や両生類から受け継いだ進化の謎が隠されているというのだ。 ラットの解剖で気絶しそうになった私にとって、人体の解剖など想像もできないが、進化論につながる解剖学があることは驚きである。 解剖実習の後は食べられなくなるというシーチキンと炒り卵のサンドイッチを眺めつつ、オタマジャクシのしゃっくりを想像する年度替わりなのである。
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