965.都会の毒(2020.4.13掲載)
今年の健康診断結果が出たので、2014年からの7年分の結果を表にして解析してみた。 50代の軌跡ともいえる数値を眺めてわかったのは、東京暮らしだった52歳、2016年が最も数値がいいということだった。いわゆるキャリアハイ。 電車通勤だから毎日仕事帰りに飲んだくれていたのに、地味な田舎暮らし時代よりコレステロールもGOTもGPTもBMIも抜群によかった。 ふと、鹿児島大学農学部が発表した「田舎のポプラより都会のポプラの方がよく育つという」研究成果を思い出した。 遺伝的に全く同一のクローンポプラを田舎と都会に植栽して3年間の成長を調べたところ、大方の予想に反して都会のポプラの方が2倍も成長が早かった。 その要因は、オゾン濃度。都会では多量の窒素酸化物がオゾンと反応し、田舎よりオゾン濃度が低くなっているらしい。有害な窒素酸化物のおかげでこれまた有害なオゾンが減り、結果、ポプラがよく育ったのだ。 毒をもって毒を制す。皇居や御苑の緑が深いはずだ。 ということは、空気がおいしい田舎のサラリーマンより、試練を肥やしに変えている都会のサラリーマンの方がよく育つということか。 例えば終電を満員にする過剰残業と自虐的痛飲。例えば普通に生活しても1万歩は軽く歩かされる健脚通勤生活。例えば抜け道の達人的活用で常に左脳が活性化される慢性渋滞。 こんな適度な毒を浴びるほどに、都会のサラリーマンは健康診断の数値がよくなるのだ。 寿命の研究者が「快適すぎる気候、快適すぎる環境はかえって体を老化させる」と言っていた。また、顔のしわを取るのは、最強の食中毒菌であるボツリヌス菌の毒素の注射である。 田舎暮らしに戻ってはや4年。健康のためにいろいろな毒を浴びる今日この頃である。
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