969.ファーブル先生(2020.5.11掲載)
東京から四国へ、毎月のように昆虫採集にやってきていた知人がコロナ禍で干上がっている。昆虫アイランドと呼ばれる四国に行けないのは、マニアにとってかなりの苦痛だというのだ。 そんな時は原点に帰って「ファーブル昆虫記」らしい。 つられて読んでみたら、冒頭のフンコロガシでハマってしまった。 逆立ちして後ろ脚でフンを転がすことを日々の営みとするフンコロガシ。そして、そのディテールを記録するファーブル先生。ただそれだけの観察日記なのだが、妙に奥深い。 そんなフンコロガシ、実は星を追いかけるロマンチストであることが発覚した。 スウェーデンのルンド大学の研究者らは、月のない夜でもフンコロガシがまっすぐ進んでいることに気づいた。目隠しをしたフンコロガシは直進できない。ならば、目印は星ということになる。 そこで、フンコロガシをプラネタリウムに連れて行くと見事に直進した。この時の必須条件が天の川。きらめく星空を用意しても、天の川がなければ直進できなかったのだ。 何ともおしゃれではないか。生業で生き物を差別してはいけない。動物界で天の川を道標に使っていることが実証された気高き最初の事例なのだから。 ふと、NHKみんなのうたで、伊武雅刀さんが歌った「フンコロガシは、忙しい。」を思い出した(2006年)。 「家族の幸せコーロコロ LOVE&PEACEだコーロコロ まだまだいけるぞコーロコロ フンは、小さな地球だよ 丸く収めてしまいましょ」 フンを地球になぞらえるなんて、まるで天の川仮説を予見していたみたいだ。そして、秀逸のサビ。 「何も悩んでは、いけません 転がすことが運命です」 おお、この哲学的達観。おそるべしフンコロガシ、おそるべしみんなの歌。 悩んではいけないのだ。運命に抗わず前進するのみなのだ。 フンコロガシを昆虫記の巻頭に持ってきたファーブル先生の慧眼に、姿勢を正す今日この頃である。
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