974.キャベツ(2020.6.15掲載)
今から45年前、我が家にステレオがやってきた。 公務員の父が大枚をはたいたビクター4チャンネルステレオ。コテコテの和室の四隅にスピーカーがセットされ、電源が入った。 「雨が続くと仕事もせずに〜キャベツばかりをかじってた〜」 ピカピカのスピーカーから初めて流れてきた曲は、かぐや姫の「赤ちょうちん」。この2番の歌詞の印象が強烈で、喜ぶ父の声と南こうせつの哀しいボーカルが今でも耳に焼き付いて離れない。 仕事のない雨の日にキャベツで飢えをしのぐ労働者という設定を、当時小学5年生の私が理解していたかどうかは定かでないが。 実はこの年、1974年は「狂乱物価」という言葉が流行語になるほどのインフレに見舞われ、キャベツも前年の3〜4倍。1玉400円になったという記事を新聞の縮小版で見た。「赤ちょうちん」の設定とは裏腹に、キャベツ高な時代だったらしい。 そして今年もキャベツ高。 コロナ禍の巣ごもり需要でお好み焼き用のキャベツが売れ、さらに大規模農家の外国人労働者が入国できず生産量も上がらない。狂乱物価時代と同じ1玉400円という値が付いた。 過去の事例で野菜が高い年はおでんが売れるのだが、衛生面のイメージが災いしてコンビニおでんも不振である。 再び「赤ちょうちん」に耳を傾ける。 1番のサビは、「覚えてますか〜寒い夜、赤ちょうちんに〜誘われて、おでんをたくさん買いました〜」。 45年前のキャベツ高、やはり人々はおでんに走ったようだが今年はどうなることやら。 飲食店の閉鎖で高級魚や高級肉が値崩れするも、庶民の野菜が高値という不思議な年。 とにかく平時に戻ることを願うばかりである。
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