976.アルベド(2020.6.29掲載)
食育出前授業で訪問した小学校の給食献立表に「ニューサマーオレンジ」を見つけ、驚いた。 ニューサマーオレンジといえば、宮崎特産の柑橘類「日向夏」の別名。宮崎では結構メジャーな果物だが、この果物の味とその正しい食べ方を知っている人は少ないんじゃないか。 以前、宮崎出身の友人から日向夏の正しい食べ方を伝授されたことがあるが、「給食で出して大丈夫なのか」という心配をしてしまった。というのも、日向夏はユズのような香りとグレープフルーツのようなちょっと苦すっぱい味で、どちらかといえばアダルト路線。おまけにその正しい食べ方が、あまりにマニアックだったからだ。 まず、リンゴのようにナイフで外側の黄色い皮を薄くむく。すると、アルベドと呼ばれる白い綿のような部分(厚さ1センチ近く)が顔を出す。次にそれを左手に持ち、ナイフを使って実をそぎ落とすのだ。 ちょうど、「ワンパクでもいい、たくましく育ってほしい」と言いながらハムをナイフでそぎ落とす丸大ハムのCMをイメージしてもらうといい。といっても70年代のCMだから伝わらないか。 この時、アルベドと実の部分が1:1になるようにそぎ落とすのが生粋の宮崎県人だと友人は言っていた。独特の酸味がアルベドで緩和される、絶妙のバランスらしい。 私もやってみたが、このそぎ落とす作業がなかなかうまくいかない。ナイフの切れ味が悪いのか実がぐじゃぐじゃになってしまい、せっかくの果汁がすっかり流れ落ちてしまったりする。 こんな手ごわい果物がなぜ学校給食に出るのか。小学生はどんな気持ちでアルベドを口にするのか。それに、イラン人の名前みたいな「アルベド」という響きも怪しい。 いやいや小学生にとってアルベドは、アニメ「オーバーロード」に登場するキャラクターとして身近な存在だという声を聞いた。 調べてみると、アルベドは「アインズ・ウール・ゴウン」という伝説的なギルドの本拠地であるナザリック地下大墳墓の守護者を統括している最高位の悪魔、という設定らしい。 こっちのほうが手ごわい、と思ってしまうのである。
\\\\
|
column menu
|