「ぼくは勉強ができない」
山田詠美著 新潮文庫 定価400円 たぶん多くの人が思うこと。 いまの価値観や精神年齢を保ったまま、小学生、中学生あるいは高校生に戻れたなら絶対楽しいだろうに。先生にしかられることなんかどうってことないし、逆に先生のお説教が学校社会でしか通用しない陳腐なものであることを教えてあげるのに。 そう、本書の主人公である時田秀美(男子)は、こんな私たちの願いを実現したかのようなチョーおませな高校生。ショットバーに勤める年上の女性と付き合っているから、バーでの会話やその女性の部屋での会話も展開するが、私にはそんな経験なかったなー。 不純異性交遊を注意する先生に対し、「不純か純粋かなどと他人が決められることではない筈だ」と反論するシーンもかっこいいし、エリートに対し、「どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分虚しいような気がする」と言ってのけるシーンもまたかっこいい。 うん、大人だ。というか、これはヒーローだな。 山田詠美の作品だけに、ちょっとエッチではあるが、ほんとにスカッとする小説だ。高校時代に読んでいたなら、たぶん変わっていただろうな、生き方。 高校時代に、私も言ってみたかったセリフを秀美が語るシーンがある。 「女の子のナイトになれない奴が、いくら知識を身につけても無駄なことである」 読後一時間は、「もう一回高校生やりたい」という気持ちにはまってしまうので要注意。
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