「プロジェクトX リーダーたちの言葉」
NHKプロジェクトX制作班 今井 彰著 文藝春秋 1,238円 「NHK人気番組の感動が一冊に!あなたはどの言葉で泣きますか?」 強引なコピーが帯タタキに踊る。国営放送のしたたかな戦略と知りつつもページをめくり、やっぱり泣いてしまう。 本書はサラリーマン必見の人気番組、NHK「プロジェクトX」の感動をリーダーたちの残した言葉に焦点を絞ってまとめたものであり、十八話分の涙が詰まっている。とりあえず独立した一冊の本であるが、実際は「番組を思い出して泣く」という特殊な使命を負った催涙弾のような本なのである。 ビクターのVHSビデオ開発ストーリーを紹介した、「窓際族が世界規格を作った」の項を紹介する。 「…『夢中でしたね。夢中っていうのは大変すばらしいことです』副社長退任のパーティーでこの言葉を残した高野は二年後、肺ガンでこの世を去った。高野の棺を乗せた車は、寺に向かう途中、最後の別れを告げるため横浜工場へ立ち寄った。VHS開発の舞台であった横浜工場を、高野は何よりも愛していた。クラクションが、霧笛のように何回も鳴り響いた。高野を乗せた車は、構内をゆっくりと回った。全社員が見送りに出ていた。駆けつけた元女子社員の胸には赤ん坊が抱かれていた。構内の中央に車が差し掛かった時、一枚の手書きの横断幕が掲げられていた。『ミスターVHS・高野鎮雄さん ありがとうございました。安らかにお眠りください』全員が深々と頭を下げたまま、泣いていた…」 ここで、オンエア時の映像と中島みゆきのテーマ曲がオーバーラップし、はからずも涙腺は決壊するのである。 「とにかく、やってみなはれ。やる前から諦める奴は、一番つまらん人間だ」 「医者というのは、患者のためにいるわけで、医者としての地位や名誉などどうでもいいことです。大切なのは、医者が患者から見捨てられないようにすることです」 「部下がついてくるかどうかは、リーダーが苦しんだ量に比例する」 後世に残る言葉が生まれる時、無名の男たちからはオーラがあふれ、当時を振り返る顔もまた神々しい。どんな仕事をすれば、こんなにもカッコよくなれるのか。 まずは毎週火曜夜九時十五分にテレビの前に正座し、単身赴任のメリット「プロジェクトXを見て男泣き」を実践しつつ、リーダーたちに学んでいこう。 プロジェクトXの一貫したテーマは「思いは、かなう」なのだから。
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