「アポロってほんとうに月に行ったの?」
エム・ハーガ著 芳賀正光訳 朝日文庫 定価476円 「アポロってほんとうに月に行ったの?」 読後三回、本書のタイトルを問わず語りに呟いてしまった。 そして虚脱感。 一九六九年七月。少年マガジンが主催した「月面着陸記念コインプレゼントキャンペーン」に当選し、小躍りして喜んだ僕は何だったんだ。 一九七〇年七月。月の石を一目見んと、炎天下の大阪万博アメリカ館に並んだ僕は何だったんだ。 一九九五年七月。映画「アポロ13」のトム・ハンクスに涙した僕は何だったんだ。 ★ 空気のない月面ではためく星条旗。着陸船と岩石の影の方向がバラバラ。逆行なのに明るく映る飛行士。ジェット噴射で着陸したのに乱れていない月面…。 次々と提示される証拠写真は少年の日の憧憬を粉々に砕いたが、「アポロ11号のコンピューター容量は任天堂のファミコン以下」と言われれば、進研模試の物理六点の筆者でも「行けるわけないわな」と納得してしまう。そして、ロケットの専門家は、「一九六九年当時の技術で、月に行って無事に地球に戻ってくる確率は〇.〇〇一七%」と語る。 もちろん「こんな嘘には耐えられない」と、真実を話そうとした飛行士もいたに違いない。しかし、その先にあるものは…。一九六四年〜六七年の間、十名の宇宙飛行士が亡くなっている。また、帰還後宗教家になったとか、精神を病んだという例のいかに多いことか。 しかし、不思議と「アメリカにだまされた」という感情は湧いてこない。むしろ、「こんな国家レベルの嘘をつき通すなんて、アメリカはすごい」と呆れるくらいだ。そんな、破天荒な本なのである。 「一九六九年七月二十日、米東部夏時間午後四時十七分四十秒、米国から打ち上げたアポロ11号が月面に着陸しました」NHKニュースより 「この一歩は一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」ニール・アームストロング船長のことば 「すべてを疑うか、すべてを信ずるかは、二つとも都合のよい解決方法である。どちらでも我々は反省しないですむからである」ポアンカレのことば
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