「ビッグ・オーとの出会い」
シェル・シルヴァスタイン著 倉橋由美子訳 講談社 1,500円 これはオトナの絵本である。 大人びた子供のためのものでもなく、少年の心を持つ大人のためのものでもない。オトナのための絵本。 そのわけは読めばわかる。 単純な線と最小限の言葉でつづられるスタイルは、米国版「相田みつを」といった感じでオトナの心をシュールにえぐる。 内容は、小さなかけらが自分をピッタリはめ込んでくれる相手を探すストーリィ。結局かけらは、かけたところのないビッグ・オーに出会い、ビッグ・オーのすすめで一人で歩き始めるのである。 歩きすぎた大人たちは、金八先生よろしくこのストーリィを人生になぞらえるかもしれないし、逆に疲れたさまよい人は、「しょせん男なんてかけらなのよ」と自己完結の免罪符にしてしまうかもしれない。 それもいいだろう。メッセージは受け手が感じるものなのだから。 最後に、一人では転がれないというかけらがビッグ・オーに説得されるシーンを紹介して、拙文の締めくくりとする。 「だって角が尖ってるよ」 とかけらは言う 「ころがるようにはできてないんだ」 「角はとれて丸くなるものさ」 とビッグ・オーは言う メッセージは読者が感じるものなのである。
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